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今回ご紹介するのは、大黒屋光太夫関係資料の中でもとりわけ有名で、当時のロシア研究の最高峰といわれる『北槎聞略』です。
ロシアからの初めての帰還者となった大黒屋光太夫は、海外を直接体験した人物として多くの蘭学者や政治家に注目されました。そして、ロシアや西洋に関する非常に多くの情報を日本にもたらし、蘭学の発展に大きく寄与しました。なかでも、幕府の命を受けた蘭学者・桂川甫周は、光太夫からロシアの情報を詳しく聴取しました。そして、それを『ゼオガラヒ』というオランダで出版された地理学書の情報と重ね合わせて『北槎聞略』という本に集大成したのです。
この『北槎聞略』は、ロシアに関する地理・歴史・言語・習慣など、光太夫が直接的・間接的に経験し持ち帰った様々な事柄が網羅され、詳細に検討が加えられています。光太夫の持ち帰った《情報》に桂川甫周という当時一流の学者の《分析》が加わって生まれた傑作、それがこの『北槎聞略』であるといえるでしょう。大黒屋光太夫を語るには避けて通れない資料です。
この『北槎聞略』は、国立公文書館で所蔵されており、国の重要文化財に指定されています。鈴鹿市では、比較的早い時期に写されたと思われる数少ない写本を所蔵しています。

